第37回 猫のストレス
滝田雄磨 獣医師
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前回に引き続き、猫のお話です。
猫はストレスを感じやすい動物です。
ストレスが原因で体調を崩し、来院される子をよく見かけます。
今回は猫のストレスの原因とその結果起こる症状、その対策について紹介したいと思います。
※ストレスという言葉にはいろいろな意味があります。今回はそれらのうち、 体と心が不安定になった場合の、嫌悪感をともなうものをストレスとして扱います。
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●性格
猫も私達同様、それぞれ性格が異なり、ものの受け捉え方も異なります。
ストレスとは縁がないような自由奔放な子もいれば、ストレスを受けやすい性格の子もいます。
ストレスを受けやすい性格の例として、神経質、怖がり、慎重などが挙げられます。 その他、過去になにかに対するトラウマがある場合は、ストレスをためやすくなります。
まずストレス問題に発展してしまう原因をいくつか紹介します。
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●疾患
ストレスの原因が疾患にある場合です。
皮膚病による痒み。消化器疾患による慢性的な嘔吐、下痢。整形疾患による慢性的な痛み。
こういった疾患があった場合、慢性的なストレスがかかります。治療可能な疾患はなるべく早く治療してあげましょう。
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●騒音
近所で工事をしている、大きな音が続くなどの環境にある場合。
猫は大きなストレスを感じます。
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・掃除
猫がトイレを使った後は、なるべく早く掃除してあげるようにしましょう。
また、排泄物と固まった砂を捨てるだけではなく、猫砂の総入れ替え、トイレ自体の清掃も定期的にしてあげるようにします。
猫砂の総入れ替えとトイレ自体の掃除は、少なくとも1〜2週間に1回はしてあげましょう。
●トイレ
猫はとてもキレイ好きな動物です。特にトイレに対しては強いこだわりをもっています。
・数
多頭飼いの場合は、猫の頭数+1つのトイレを用意するようにしましょう。
トイレは適した場所に置くようにしましょう。
・場所
トイレを置くのに適した場所の条件は、エサ場から離れている。静かである。風通しが良い。などが挙げられます。
人通りが多い場所では落ち着いて用を足せなくなってしまいます。
風通しが悪いと、ニオイがこもってしまい、トイレを嫌うようになってしまいます。
猫の食欲は視覚よりも嗅覚から得られます。トイレと食事は離しておかないと、食欲減退もしくは排泄不良を促してしまいます。
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・大きさ
たまに猫とトイレのサイズが合っていないことがあります。
幼いころからかわいがっていた猫が、気づいたらコロコロと横にもとても大きく成長していたということはよくある話です。
体とトイレのサイズが合わないと、トイレを使わなくなってしまいます。
猫の全長の1.5倍以上のサイズを用意してあげるようにしましょう。
・砂
いろいろな種類の砂がありますが、猫により好みがあります。
また、砂の種類を途中で変えるときは、以前使っていた猫砂と少しずつ混ぜながら変えていくようにしましょう。
一度に猫砂を全て変えてしまうより、受け入れてもらいやすくなります。
ただし、猫砂の種類によっては、処理方法が異なったり、食品系の猫砂は食べてしまうことが多かったりなど、他の猫砂と混ぜないほうがいいものもあるので、パッケージの注意書きなどで確認しましょう。
猫砂を入れる量も大切です。排泄物を隠せるように、深さが3cmほどあると理想的です。
●同居動物
猫は単独で行動することが多い動物です。地域猫を見てみると、特にオスの場合、単独行動で放浪する猫を多く見かけます。
そのため、室内で多頭飼育をすると、猫同士の対立は頻繁に起こってしまいます。猫の対立が起きやすい条件には以下のようなものがあります。
環境を整備することは簡単ではありませんが、多頭飼育には多頭飼育のための環境整備を心がけましょう。
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●攻撃行動
同居動物や飼い主に対し、攻撃行動を起こしてしまうことがあります。
場合によっては出血をともなう大怪我をすることもありますので、早めに対策を練りましょう。
ストレスがたまると、どのような症状が現れるのでしょうか。
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●過剰な爪とぎ、尿マーキング
特に同居動物との対立のときにみられますが、ストレスがたまると、不適切な場所での過剰な爪とぎや尿マーキング行動が起こります。
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●膀胱炎
ストレスから膀胱炎を起こしてしまうことがあります。
特に、トイレの環境や同居動物との対立により、排泄行動に障害がある場合に多く見られます。
●消化器症状
ストレスの結果、食欲不振、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状を引き起こすことがあります。
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●毛玉吐き
過剰なグルーミングの結果、多量の毛玉を吐くことがあります。
●脱毛(裂毛)
過剰なグルーミングにより、毛がちぎれてはげてしまうことがあります。
特に膀胱炎を併発しているとき、膀胱付近に違和感を感じ、下腹部を過剰に舐めてはげてしまうことがあります。
猫の舌は無数のトゲがついているため、舐め行動が悪化すると、皮膚が赤くびらんになってしまうこともあります。
●毛玉の増加
過剰なグルーミング行動がみられる一方、ストレスによってグルーミングが減少することもあります。 その結果、体表の毛玉が増えてしまいます。
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●猫フェロモン
猫は顔からフェロモンを分泌しています。
このフェロモンは、猫同士のコミュニケーションをとるはたらきがあります。 猫は顔を物や人にこすりつけるときに分泌され、猫に安心感を与える作用があります。
このフェロモンの類似物質を環境中に散布する製品があり、これを用いることでストレスを軽減することができます。 -
●抗不安剤
問題行動が重度であり、弊害が大きい場合、抗不安作用のある薬剤を用いる方法があります。
●原因を取り除く
ストレスが原因と考えられる場合、その原因を取り除くことが治療となります。
しかし、原因を取り除くこと、もしくは原因を特定することができないことも多々あります。
その場合は、後述する治療法を併用します。
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●サプリメント
不安を抑えるサプリメントがあります。
ミルクのタンパク質など、副作用がほぼない物質でありながら、抗不安剤と同等レベルの効果が得られたという報告もあります。
最近では、この成分を含んでいるキャットフードも開発されています。
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猫のストレスとその症状、治療法について紹介しました。
いまいちど猫を飼育している環境を見直し、その猫がストレスをより感じにくくなるような改善点がないか検討してみましょうまた、ストレスが原因とみられる行動がみられる場合は、早期に動物病院に相談し、積極的に治療しましょう。
猫と飼い主、おたがいのQOLを大きくあげることができるかもしれません。