第29回 チョコレート中毒
滝田雄磨 獣医師
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犬猫に食べさせてはいけない有名な食べ物。チョコレート。
中毒を起こす物質のなかでは、チョコレート摂取は比較的よくみかけます。
犬猫がチョコレートを食べるとどうなってしまうのか、ご紹介したいと思います。
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チョコレートとは、カカオマス(カカオの種子を発酵、焙煎したもの)、 砂糖、ココアバター、粉乳などを混ぜて練り固めた甘くて美味しい食品です。
英語ではホットチョコレートというとホットココアの意味になるように、飲み物のココアもチョコレートの一種です。
また、砂糖や粉乳の配合料が少ない、甘みの少ないブラックチョコレート。
粉乳が配合されたミルクチョコレート。
カカオ分が少ないホワイトチョコレートなどのいくつかの種類に分けられます。
チョコレートの成分には、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルの他、
ポリフェノール、テオブロミン、カフェインなどが含まれます。
昔は薬としても使われていたチョコレート。
手軽にカロリーを摂取できることから、軍隊や登山の非常食としても使われてきました。
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近年では、カカオポリフェノールの抗酸化作用、テオブロミンの血管拡張作用などにより、動脈硬化予防、血圧低下、肌老化予防、アレルギーの改善、脳の活性化、うつ病の改善など様々な健康効果があるとして注目されています。
食べ過ぎはカロリー摂取過剰の問題がありますが、
甘みを抑えたチョコレートを、1日に約25g摂取することが健康によいと推奨されています。
犬猫をふくめ、多くの動物はチョコレートを摂取すると中毒症状を起こし、
最悪の場合、命を落とすこともあります。
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その原因は、人間では健康効果が期待できる成分、
テオブロミンやカフェインなどの成分にあります。
多くの動物は、これらの成分を代謝する能力が低く、
中毒症状を起こします。
これらの成分はどんなチョコレートにも多量に含まれているわけではありません。
子供が好むような、甘いチョコレートやホワイトチョコレートには少量含まれています。
甘くないブラックチョコレートや、料理に使われるような苦いチョコレートには多量に含まれています。
犬猫がチョコレートを食べてしまった場合、どのようなチョコレートをどれだけ食べたのかが予後に関わってきます。
体重の軽い小型犬が、甘くない料理用チョコレートを食べてしまった場合は、少量であっても重症化する恐れがあります。
最後の発作などの神経症状まで進行することは稀ですが、神経症状まで進行すると、
命に関わる確率が高くなります。
犬猫がチョコレートを食べてしまったら、可能であれば吐き戻させます。
飼い主が喉の奥に指を入れて吐くこともありますが、成功率は低く、飼い主も怪我をする恐れがあります。
動物病院では薬を使った催吐処置をすることができます。
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チョコレートを食べてから4時間以内であれば、
食べたチョコレートの大部分を吐き戻させることができます。
なるべく早く動物病院を受診するようにしましょう。吐き戻しに成功したら、残った成分を排出させるため、
吸着剤の経口投与、点滴による補液などの処置をします。
吐き戻しでうまく排出することができなかった場合は、上記の治療をしつつ、神経症状が起きないか注意深く観察します。
発作を起こしてしまった場合は、抗けいれん薬を投与します。
不整脈を起こしてしまった場合は、抗不整脈薬を投与します。
このように、チョコレート中毒には、特効薬がありません。
摂取してしまった成分をなるべく早く排出させつつ、起きてしまった症状に対する対症療法によって治療します。
犬猫のチョコレート中毒に関する症状、治療法について紹介しました。
チョコレート中毒だけでも充分恐ろしい疾患ですが、
チョコレートを摂取したときには、もうひとつ注意してほしい疾患があります。
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チョコレートには脂肪分が多く含まれます。
特にナッツ入りのチョコレートを犬猫が食べてしまった場合、 多量の脂肪分を摂取してしまっています。
多量の脂肪分を摂取してしまったとき、警戒しなくてはならない疾患が膵炎です。
膵炎は多量の脂肪分を摂取したあと、急性に発症することがあります。
主な症状は、激しい嘔吐、下痢と腹痛です。
犬猫がチョコレートを摂取した数日後、
神経症状がなくても消化器症状や腹痛が認められたら、早めに動物病院を受診してください。
急性膵炎もまた、命を落とすおそれがある恐ろしい疾患です。
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犬猫がチョコレートを摂取してしまったときの弊害、
治療法について紹介しました。
しかし、そもそもチョコレートを食べることができる環境がなければ、
チョコレート中毒は起こりません。
犬猫たちは、あの手この手で家の中に美味しい食べ物がないか探し出します。
飼い主側も、その知恵に負けないよう、徹底的に隠さなければいけません。バレンタインデーなど、季節によって患者が増えるチョコレート中毒。
犬猫たちのために、中毒性物質のしっかりとした収納を徹底しましょう。