第18回 犬猫に寄生する虫。ノミ。
滝田雄磨 獣医師
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三寒四温を経て、暖かい日が増えてきた今日このごろ。
虫たちが活発になる季節です!今回は、犬猫に寄生する代表的な虫、ノミについてお話します。
ノミの種類
ノミとは哺乳類の体表に寄生し、血液を吸う虫です。
ヒトに寄生するヒトノミや、ネコノミ、イヌノミなどがいます。
それぞれに寄生する名前がついていますが、その動物にだけ寄生するわけではありません。
ネコノミが人間を吸血することもあります。
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また、犬猫に寄生しているノミを調べてみると、
犬の92%以上、猫の97%以上がネコノミです。
つまり、犬猫に寄生しているノミのほとんどは、
ネコノミということになります。
ちなみに、ネコノミが人間を咬むこともあり、腫れ上がったり水ぶくれになったりします。
ノミの生活環
ノミは完全変態をする虫で、卵→幼虫→サナギ→成虫と変態します。
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①成虫 成虫は強靭な脚力を持ち、ピョンピョンと飛びながら動物を探します。
主に、動物が出す二酸化炭素を目印に探していると言われています。
成虫が動物にたどりつくと、毛の奥へと潜り込み、皮膚へと到達します。
皮膚へ到達したノミは、即座に吸血を開始します。
寄生してから吸血まで、5分以内です。
メスの成虫は、吸血後、24時間以内に産卵します。
その数、1日に20〜50個。
成虫の寿命は3〜6週間。一生に少なくとも400個ほどの卵を産みます。
②卵
直径0.5mmの卵。卵は動物の毛に付着しますが、まもなく地面に落下します。
つまり、ノミの感染が認められた動物の周りには、ノミの卵が散乱しています。
落下した卵は3〜4日で孵化し、幼虫になります。
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③幼虫 幼虫はフケやノミ糞を食べて成長し、2回脱皮します。
2回脱皮が終わるまで、1〜2週間です。
2mmから5mmほどまで成長し、サナギになる準備をします。
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④サナギ 成長した幼虫は、繭を形成し、なかでサナギになります。
サナギになると、約10日で羽化する準備が整います。
しかし、すぐに羽化するわけではなく、
近くに動物が来るのをじっと待ち続けます。
その間、数ヶ月におよぶことも。
そして、振動や二酸化炭素の刺激が加わると、一気に羽化し、
動物を探して跳び回ります。大量の繭が一気に羽化し、成虫が飛びかかってくる・・・
想像するとちょっとゾッとしますね。
ノミが増殖するスピード
高温多湿であれば、ノミの生活環は、およそ3週間。
3週間がたつと、次の世代が産卵をします。
一匹のノミ子さんが寄生したとき、 毎日50個の卵が産卵され、うち半分がメスだとすると、
3週間後、2世代目が成熟し、50÷2=25匹のメスが25✕50個の卵を産卵します。
その頃、最初のノミ子さんは亡くなります。
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22日目は、寄生されて2日目にノミ子さんが産卵した世代25匹が加わり、50✕50個の卵が産卵されます。
その翌日は75✕50個、100✕50個、125✕50個・・・
42日目は、25✕50÷2=625匹の第3世代のメスが加わります。
産卵する数は、625✕50=31250個
43日目は、50✕50÷2=1250匹のメスとなります。
産卵する数は、1250✕50=62500個
もう、ねずみ算式に莫大な数へと増えていきます。
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ノミの吸血量
ノミの成虫は、1日に約10μlの吸血をします。
先程の計算より、第三世代が成虫となる2ヶ月が過ぎた頃、
ノミが一度に寄生する数は、1万匹を超えます。
すると、1日に10万μlの吸血をされます。
10万μl=100ml
当然この量の吸血をされれば、小型犬や猫は貧血に陥ります。
単純計算ではありますが、あんなに小さなノミでも、吸血量は膨大な量になるのです。
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かゆみ
ノミの寄生には、貧血以外にも弊害があります。
まず、痒みです。
ノミは漢字で、蚤、と書きます。
かゆくて身体をかくときの、かくという言葉は、漢字で、
搔く、と書きます。
また、さわぐという言葉は、漢字で、騒ぐ、と書きます。
馬にノミがついて、痒くて騒いでいる様子です。
むかしからノミは我々にとって身近な存在で、痒みの象徴だったと言えます。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミに吸血されるとき、ノミは血が固まらないように、
抗凝固作用を持つ唾液を動物に注入します。
動物がこの唾液に対するアレルギー反応を起こすと、ノミに吸血された部位に限らず、
腰背部など広範囲に皮膚炎が現れます。
この疾患の厄介なところは、ノミに咬まれる前に駆虫することが難しいという点です。
先述したように、ノミの成虫は、
動物の体表に到着してから吸血を開始するまでの時間が極めて短く、5分以内です。
しかし、現在開発されているノミの駆虫薬は、
ノミが体表についてから、駆虫されるまで、早くても30分はかかります。
つまり、ノミが駆虫されるころには、1回吸血されているのです。
継続した寄生は予防できるため、貧血におちいることはなくなりますが、
ノミアレルギーを完全に防ぐことは困難です。
そこで、環境中のノミを撲滅することが肝心となります。
成虫以外のノミは、環境中、カーペットの奥などに生息しています。
そこで、殺虫剤、毎日の掃除機などで環境を清浄化することで、
新たな寄生を予防することができます。
繭、サナギの状態のノミは、殺虫剤に対して強い抵抗性を持つため、
殺虫剤を使ったからと安心せず、徹底した掃除が必要です。
室外においては、草むらや他の動物との接触をさけることで、
ノミに吸血されるリスクを減らすことが出来ます。
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瓜実条虫
犬猫の腸管のなかに寄生する線虫のひとつに、瓜実条虫という虫がいます。
俗に、サナダ虫とも呼ばれる白い糸状の虫です
にわかには信じがたい話ですが、
この寄生虫の幼虫が、あのノミの小さな体の中に入り込みます。ノミは痒くなるため、動物はグルーミングをし、
舐めて瓜実条虫が入ったノミを飲み込んでしまいます。動物のおなかのなかに入った瓜実条虫は、
感染し、下痢、食欲不振、体重減少などの症状を呈します。ただし、無症状のこともあるので、
ノミの寄生が認められた場合は、糞便検査もしておいた方が安心です。
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われわれ人間にはほとんど見られなくなった、ノミの寄生。
犬猫にとっては身近な感染症です。
今回紹介したように、ノミが寄生すると様々な弊害が起こります。
ノミアレルギーに関しては、完全な予防は難しいですが、
月に1回の駆虫薬を使えば、被害は最小限に抑えることが出来ます。たかがノミ。されどノミ。
犬猫たちが苦しまないよう、春になったら、しっかりと予防しましょう。
ノミは定期的な駆虫薬を