第14回 冬に多い病気〜関節疾患〜
滝田雄磨 獣医師
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冬に多い犬猫の病気。
今回は関節疾患について紹介していきます。
①関節の種類
関節は骨と骨をつなぐ構造です。
頭蓋骨にみられるような不動性の関節と、四肢にみられるような可動性の関節があります。
可動性の関節は、その形状、動きの範囲などから何種類かに分けられます。
今回は冬に痛めることが多い、可動性の関節、
特に膝などの病気になりやすい関節について紹介していきます。
②関節の構造
膝などの関節は、骨と骨が互いに凹凸になっており、噛み合って成り立っています。
そのままでは関節が動くときの摩擦によって骨がすり減ってしまうため、
骨が接する面は軟骨で覆われており、
さらに関節液という潤滑油の役割をしている液体によって満たされ、
関節包という構造で包まれています。
関節は一定の方向へ動きやすい構造をしていますが、
実際は運動する上で色々な方向へ力が加わります。
その力が直接骨、軟骨へ無理に加わると、すぐに破損してしまいます。
それを防ぐために、本来の動く方向ではない向きへ加わった力を受け止めるよう、
靭帯で補強、制御されています。
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人間でも有名なところで言うと、
膝が前後に滑るのを防いでいる前十字靭帯などがそれです。
スポーツ選手でときどき前十字靭帯断裂を耳にしますが、
急な方向転換をともなうような激しい運動をする人で
損傷しやすい靭帯です。
犬では肥満の子で多く発症します。
老化と関わりのある関節疾患のひとつです。
関節の構造が変化することにより、関節の機能が制限され、痛みを伴います。
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①原因
肥満、過度な運動、靭帯損傷による関節の負担の増加、
加齢性変化など
②構造の変化
軟骨の摩耗、びらん、潰瘍、骨棘の形成
※骨棘:
不安定な関節において、関節に加わる力を分散させるために、
骨増生をおこして接着面積を広げようとする防御反応です。トゲのように見えます。
③症状 跛行(歩き方の異常)、痛み
④治療
変形性関節症は進行性の疾患です。
構造が変形してしまうと、基本的に元には戻りません。
したがって、疼痛の管理と疾患の進行を抑えることが治療となります。
これらの治療には、鎮痛剤を投与する方法と、サプリメントを使う方法があります。
サプリメントにはオメガ3脂肪酸やグルコサミンなどを含んだものがあります。
サプリメントは様々なものが開発されており、
近年のものは治療成果もよく、多数の報告が寄せられています。
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軽度の変形性関節症であれば、
サプリメントである程度コントロールすることができます。
サプリメントや鎮痛剤ではコントロールできないような重度のものであった場合、
外科手術によって人工関節を用いることもあります。
膝のお皿が脱臼してしまう疾患です。
小型犬を中心に、日頃もっともよく見かける関節疾患のひとつです。
①膝蓋骨
膝に蓋をしている骨。いわゆる膝のお皿です。
大腿骨の溝に沿って動くことで、膝の曲げ伸ばし運動を担っています。
②構造の変化
膝蓋骨自体の構造が変化することは、ほとんどありません。
膝の内側もしくは外側に脱臼し、
大腿骨の本来はまるべき溝ではない位置に膝蓋骨が移動します。
軽症例では、脱臼しても自然に元の位置に戻ります。
小型犬でよくみられる疾患で、ほとんどが内側への脱臼です。
触診で脱臼させられるもの、脱臼しっぱなしになっているもの、
触っても元の位置に戻せないもの、などでグレード分けされます。
重度の場合は、触診で元の位置に戻すことが出来ません。
症状が進行すると、脱臼した位置に刺激を与え続け、あらたな溝を形成することもあります。
③症状
痛みをともなったり、跛行したりします。
よくみられる症状は、外で走っているときに急に片足だけ挙げ、
ケンケンをし、いつのまにか元通りに歩いているというものです。
この場合、軽度の膝蓋骨脱臼で、自然と脱臼が整復されたものと考えられます。
最初のうちは、本人も驚いてキャンキャン鳴いていたけど、最近は慣れてしまったみたい
という声もよく聞きます。
鳴かなくなったからと言って、治ってしまったとは限りません。
膝蓋骨が脱臼しっぱなしになっている場合もあります。
重症化するまえに一度動物病院で診断してもらいましょう。
④治療
膝蓋骨脱臼は幼いころに発症するケースも多く、
生まれつき脱臼しやすい構造になってしまっている子を多くみかけます。
これらの治療反応が悪い場合や、足を挙げっぱなしになってしまうような子では、
外科による治療を検討します。
外科による治療方法は、何通りかあります。
・膝蓋骨がはまるべき溝を深くする。
・膝蓋骨が付着している靭帯の終着部位ごと外側にずらす。
・関節包などの周りから制御している構造を部分的に切除し、膝蓋骨を制御している力の向きを変える。
重症度により、これらを組み合わせて治療します。
術後は、1ヶ月以上安静にし、徐々にリハビリをして慣らしていきます。
重度の症例では、長い間、脱臼している方の脚を使わない生活をしているため、
筋肉が萎縮しています。
適切なリハビリと食事で、筋肉をつけていきます。
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ご紹介した関節疾患をはじめ、
冬は関節疾患をわずらいやすい季節です。
その理由として、寒い時期の血行不良、
運動量の低下からくる肥満が考えられます。
急な運動を避け、身体が冷えないようにし、運動時に滑らないよう
環境と足裏の毛刈りなどの管理をし、肥満にならないよう体重管理をする。
自然には治らない疾患だからこそ、日頃からの予防を心がけましょう。