第10回 吐き戻し
滝田雄磨 獣医師
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犬や猫を飼っていると、しばしば起こる吐き戻し。
個体差はありますが、ヒトに比べると、
それほどめずらしい症状ではありません。
しばしば起こるため、見過ごされることも多い症状ですが、
病気のサインであることもあります。
吐き戻しがみられたら、どのようなことに注意すればよいのか。
吐き戻しと病気についてお話していきます。 -
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吐出と嘔吐
まず、ひとえに吐き戻しと言っても、種類があります。
吐出（トシュツ）と嘔吐（オウト）です。
吐き戻しが吐出と嘔吐のどちらなのかを把握することが、原因解明の第一歩です。
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①吐出
【吐出の特徴】
吐出とは、口から入ったものが胃に到達する前に吐き戻されることです。
胃に溜め込んでいないので、比較的に食後すぐにみられます。
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また、胃液による消化を受けていないため、未消化のものが吐き戻され、
その形は食道の形、柱状となることがあります。
いったん胃に到達したものを吐き戻す嘔吐とは違い、
吐き戻しの前にお腹の激しい収縮性の運動がみられません。
これらの特徴を踏まえてしっかりと観察をしないと、
吐出と嘔吐の鑑別はできません。したがって、飼い主の知識が重要です。
鑑別が難しいときは、動画を撮って獣医さんに診てもらいましょう。 -
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【吐出の原因】
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異物
食道の中に物が詰まっている状態です。
食道の筋肉の痙攣や、粘膜の浮腫が起こり、どんどん通過しづらくなります。
そのため、基本的には待っていても異物は通過しません。
食道穿孔など重篤な症状が起こる前に、早急な処置が必要です。
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食道炎
食道に炎症が起きている状態です。
薬による反応、外傷、激しい嘔吐などが原因で起こります。
猫は犬に比べて、口から入ったものが胃に到達するまで時間がかかります。
そのため、刺激の強い薬を飲むときは注意が必要です。
結膜炎や鼻炎など広く使われている薬の中にも、刺激が強い薬があります。
粘膜を保護するため、薬が食道に長くとどまらないように工夫が必要です。
水か食事と一緒に投薬するようにしましょう。
食道炎が起こると、食道の筋肉が弛緩します。
すると胃液が逆流しやすくなり、食道炎が悪化します。
ヒトと違い、体が横になっているため胃液が逆流しやすいのです。
最初は軽い症状でも、悪循環で重篤化することがあります。
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食道狭窄
食道が細くなっている状態です。
食道炎が原因で細くなることがあります。
バリウムなどの造影剤を用いたレントゲン検査で診断します。
内視鏡と特殊な風船状の器具で治療します。
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腫瘍
腫瘍が原因で通過障害が起こっている状態です。
外科切除など、腫瘍に対する治療が必要です。
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巨大食道症
食道が全体的に拡張している状態です。先天的のものと後天的のものがあります。
重症筋無力症など、原因が特定できた場合は、それに対する治療をします。
食後２０〜３０分間立位にし、食べたものを胃に落としやすく補助します。
誤嚥性の肺炎を繰り返すなど、重症化する例も多くみられます。
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吐出は嘔吐と比べると、緊急疾患が原因にあることが多いです。
繰り返す場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
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②嘔吐
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嘔吐とは、胃の中のものを吐き戻すこと。
食道内のものを吐き戻す吐出と区別されます。
特徴は、吐き戻す前にみられる腹部の激しい収縮運動で、ゴボッゴボッという音がします。 -
【嘔吐の特徴】
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【嘔吐の原因】
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実に様々な原因で嘔吐が起こります。
食餌、胃腸に限らず、全身疾患が原因で起こることも多くあります。
今回はいくつか原因となるものをピックアップして紹介します。
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食物有害反応
食物が体に合わず、アレルギーなどの反応を起こしている状態です。
低アレルギー食など、食餌の変更により治療します。
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寄生虫感染
消化管の中に寄生虫の感染が起こっている状態です。 糞便検査で診断し、駆虫薬によって治療します。
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胃腸炎
胃腸に炎症が起こっている状態です。炎症の原因を探りつつ、治療します。
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薬剤
NSAIDsなど、胃腸に負担のかかる薬は多くあります。
原因となっている薬の投薬を中止し、胃腸薬により治療します。
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心因性
精神的な負担から嘔吐を起こしている状態です。
来客、旅行、天候、騒音、留守番などが原因としてあげられます。
ストレスと片付けてしまうことは危険ですが、見逃してはいけない原因です。
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乗り物酔い
比較的わかりやすい原因です。多くの場合、同じ条件で再発します。
制吐剤をまえもって投薬するなどして予防します。
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腎臓病
腎臓病が悪化すると、血液中の尿素窒素量が多くなり、嘔吐します。
腎臓に対する治療と、食餌、補液などによる治療をします。
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子宮蓄膿症
子宮蓄膿症による細菌感染が重篤化すると、嘔吐するようになります。
死に至ることもあり、早急な治療が必要です。
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膵炎
膵臓に炎症が起こっている状態です。
軽い嘔吐と食欲低下など、最初は症状が目立たないことがあります。
しかし、数日の間に悪化し、死に至ることもあります。
脂分の多いものを沢山食べた後に起こることが多いです。
しかし、原因不明で特発的に起こることも多く、注意が必要です。
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犬猫にみられる症状のうち、比較的よくみられる症状、吐き戻し。
一時的ですぐに良くなってしまうことが多い症状です。
しかし、だからこそ様子見にされ、
重篤な病気を見落としてしまうことが多い症状でもあります。
吐き戻しがみられたら、全身状態に異常はないか、
他に特徴的な症状が起きていないか、油断せずに観察し、
早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。 -
